大破ログ

日々大破、それと側転少々。PC関連その他、気になったことなどをつらつらと。

ELECOM WRC-X3200GST3

WRC-X3200GST3内部

サポート投げ込みではWSR-2533DHP2に続いて2機種目となるMT7622 (ARM)搭載機。去年4月頃に某氏より提供頂いてサポート作業を始め、1年以上経ちようやくマージされました。
まとめていきます。

仕様

中心的なハードウェア構成自体はWSR-2533DHP2と似通っており、SoCにはaarch64のMT7622Bを(mips(el)のMT7621ではない)、無線部についてはWi-Fi 6 (11ax)対応である為MT7915を搭載しています。
法律の関係上、無線機能の使用は非推奨です

  • SoC: MT7622B
  • RAM: DDR3 512MiB
  • Flash: SPI-NAND 128MiB
  • WAN/LAN: 1000Mbps/1000Mbps x4 (MT7531)
  • UART: J19, 115200bps(DCジャック側から3.3V, GND, TX, RX)

その他の詳細については、雑記を参照。

OpenWrt化

この機種においてもramips targetで既にサポートされているWRC-*GS/GSV/GSTシリーズと同様のファームウェア形式である為、factoryイメージを作ることができ、容易に導入することが可能です。

WRC-X3200GST3を起動
電源ケーブルを繋ぎ、通常通りWRC-X3200GST3を起動
WebUIにアクセス
WRC-X3200GST3の設定用WebUIを開き、ファームウェア更新ページへ移動
ファーム更新
WRC-X3200GST3のfactoryイメージを選択し、アップデートを実行
完了
Flashへの書き込みが完了後再起動され、OpenWrtで起動してくる

備考

この機種においても特段の癖は無し。

  • mediatek targetに既存で、なおかつ海外においてはMT7622搭載機として人気があるらしいE8450と異なり、非UBI版とUBI版でサポートを分けずにUBI版の1つのみとした。また、UBI版ではあるもののブートローダ (U-Boot)置き換えを前提とせず、メーカー出荷時のブートローダで使用することを前提としたサポート。
    理由としてはブートローダを置き換えたくないという一点が非常に大きく、もし置き換えた場合は、リリース版ファームウェアをWebUIから投入するテストが必要な際などにわざわざブートローダ等大規模な書き換え作業が必要となり、作業を誤って文鎮化させるリスクが高くなる。
    その他、一つの機種に対するサポートが複数あるとユーザー側を混乱させるかもしれないという理由もあるにはある。

  • メーカーファームウェアに書き戻す際は、公式からダウンロードしたものからヘッダを除去した上で6MiB丁度と残りに分割の上、それぞれkernelパーティションとubiパーティションに書き込む。

  • Flashは上記の通り128MiBであるものの、NAND特有のbadblock取り扱いに必要な領域や、その他の情報が保管される領域などである程度の容量が取られており、最終的にOpenWrtにおいて自由に使用できる容量はさほど大きくは無い。

  • OpenWrt 22.03用ブランチが切られた後のマージであった為、当該リリースには含まれず、次のメジャーリリース以降からサポートされる見込み。

作業時の色々

  • この機種においては、以前サポートをOpenWrtメンバーのhauke氏と共に投げ込んだWSR-2533DHP2のRTL8367Sと異なり、サポート済みであるMT7531を搭載している為、特に難なくネットワーク周りを動作させ作業を進めることができた。

  • 前述の通りramips targetで既にサポートされているWRC-*GS/GSV/GSTシリーズと同様のファームウェア形式を採っている為、factoryイメージ生成用コードを流用でき、その辺りは容易に仕立てることができた。

  • この機種においてはSPI-NORではなくSPI-NANDをFlashとして搭載している為badblockの発生を考慮する必要があり、PRを投げた後もしばらくはその辺りの対応で指摘をいくつか受けたり、修正が必要になるなどした。

色々

今回はおおよそのサポート自体はそれほど時間を要さず終えたものの、細かな調整や修正等によってマージされるまでにそれなりの時間を要した。特に、OpenWrt内におけるドライバの仕様変更に伴って2回ほど書き換えが必要になった個所もあった。
MT7622については、今回この機種を提供頂いた某氏から、WSR-2533DHP2におけるWireguard等の使用などでだいぶ優秀な実績を聞いており、その選択肢に今回加えられたのでその時々の中古価格などから選ぶと良いと思われる。あと